横浜の加賀町。小高い山の上に位置するのは、バイクメーカー「山野モーター」の次期社長の座を狙っている柿沼の住まいです。彼の妻、絹子は夫の野心に嫌気が差し、彼の部下である小笠原と不倫関係にあります。一方、山の斜面に建つ古い家には、仕事中の事故で夫の隆一を亡くした国子と彼女の弟、弘二が住んでおり、国子は隆一の忘れ形見である武を育てるために中華街で賄い婦として働いています。 ある日、絹子は小笠原との密会からの帰り道で、道路に飛び出してきた武を轢き殺してしまいます。新車の発売が間近に迫っている柿沼は、この事件がマスコミに大きく取り上げられることを恐れ、専属運転手である菅井を説得して罪を被せ、国子には示談を持ちかけます。しかし、息子は菅井に殺されたと信じている国子の元に、事故を偶然目撃していた老女、久子が現れ、実際に子供を轢いたのは女性だったと伝えます。 真犯人が罪を問われていないことに怒りを覚えた国子は、身分を偽って柿沼家に家政婦として潜り込み、柿沼夫妻の一人息子で亡くなった武と同じ年齢の5歳の健一を殺害することで復讐を果たそうと考えるのでした。