週刊文春に連載された川口松太郎の同名小説をもとに、「美少年変化 竜の岬の決闘」の八尋不二が脚本を担当し、「怪談 蚊喰鳥」のコンビである森一生が監督、本多省三が撮影した華麗な王朝ドラマ。 帝から最愛の寵愛を受けた桐壷が光源氏を生んで間もなくこの世を去る。光源氏は宮中の女性たちの憧れとなり、時の権力者である左大臣の娘、葵の上を正妻として迎え、その前途は明るく開けていた。しかし、そんな光源氏の前に母親と瓜二つの女性、藤壷が現れる。父帝の想い人だと知りながらも、源氏の心は燃え上がった。このことを知った従者の惟光（これみつ）は、藤壷付きの王命婦に源氏を几帖（きちょう）の中に忍び込ませるようそそのかした。源氏の甘い抱擁に心を奪われた藤壷であったが、罪の意識に苛まれる。 藤壷に帝の寵愛を奪われて面白くない弘徽殿の女御（こきでんのにょうご）は、兄である右大臣と共に藤壷の失脚を企てる。この叔母と父の陰謀を、東宮の妃に上がる予定の朧月夜は耳にしていた。朧月夜は、藤壷の館に忍び込む源氏を追い、強引に几帖の中に引き入れ、自らの肌を惜しげもなく彼に与え藤壷に近づかぬよう忠告した。 やがて藤壷は玉のような皇子を出産する。何も知らぬまま喜ぶ帝を見て、源氏の心は暗澹となる。その憂さを晴らそうと野遊びに興じた源氏は、常陸官の姫、末摘花と出会い、彼女の女らしいもてなしに心を癒していた。その頃、葵の上は妊娠しており出産を待つ身であった。葵祭の日、葵の上の牛車が六条の御息所の網代車に衝突し、相手の車のナガエを折ってしまった。悔しさと怒りに燃えた六条の御息所は、生霊となって葵の上を襲う。葵の上は男子を出産するとともに命を落とした。 悲しみに沈む源氏にまたしても、父帝が崩御し朱雀帝が即位した。源氏は娘の紫の成長を慰めに日々を過ごすようになった。今や新帝の妃となった朧月夜は、一夜の源氏との情事を忘れることができないでいた。大胆にも藤壷の館に忍ぶ源氏を見つけるや、几帳の中に引き入れ藤壷に近づくことの危険性を囁いた。この二人の密会を弘徽殿の女御が発見した。 女御の知らせによりこれを知った朱雀帝は激怒する。源氏は新帝からの命により須磨明石へと移ることを余儀なくされた。