忠彦とその許婚者である啓子の二人は、山道で迷ってしまいます。そんな時、突然現れた一匹の猫を追いかけることになり、最終的にたどり着いたのは古びた廃屋でした。啓子はその後発熱し、幻覚の中で怪しげな猫に姿を変えた老婆を目にすることになります。しかし、その廃屋こそが、かつて恐ろしい事件が起こったと言われる代官屋敷の跡地だったのです。 約百年前、名主である何条新兵衛は、厳しい年貢に苦しむ百姓たちの苦境を代官、鬼沢形部に訴え、土地の再検査を願い出ました。ところが形部は、その娘である秋野を手に入れたいと企んでおり、邪魔者扱いされて何条新兵衛はお玉が池で惨殺されてしまいました。 その頃、秋野は怪しげな猫の玉が泣き続け、その後南条家で火災が起こったことで、父親に何かが起こっていると感じ取り、逃げ出そうと試みます。しかし、形部らに追い詰められ、自らの咽喉を貫き命を断ちました。 形部の弟である五郎太は、医者の娘である小笹に夢中になりますが、小笹は新兵衛の息子である八千丸に想いを寄せていました。京から戻った八千丸は、焼け落ちた自宅の前で立ち尽くすと、猫の足元に代官の紋所がある印籠を見つけます。彼は代官の屋敷に突入するも、返り討ちに遭い、お玉が池でその命を散らしました。 それから数日後、五郎太と小笹の結婚式が執り行われます。ところが、小笹は初夜に屋敷を抜け出し、病床に伏せることになります。そしてついには怪猫と化し、報仇を誓いました。彼女は屋敷に忍び込み、形部の下に姿を見せます。これを見て怒り狂った五郎太と形部は、互いに激しく切り結びます。玄斉を巻き込んでの争いの中で、三人は亡霊に悩まされ、やがて全員が相討ちとなり、お玉が池へと消え去りました。 怪しげな猫も深い傷を負い、復讐を果たしたと同時に静かに息を引き取ります。実は、忠彦は南条家の血筋、啓子は玄斉の家系に連なる、いわば宿敵どうしの家柄でした。二人は玉のミイラを見つけ、それを供養することにしました。